初めてノートPCを使いだした頃、そのコンパクトさに感動したものです。
「おお、ちゃんとしたパソコンが、持ち歩ける!」
あれって何十年ぐらい昔だったのかな……なんて言いたくなるほど、ノートPCを持ち歩くのが億劫になってきました。今プライベートで使っているMacBookは、およそ2キロ。決して重い方ではないんですが、出かけるとき、「使うかもしれないから、とりあえず持ってくか!」なんてのには、とても厳しいものがあります。とはいえ、文章書くのに今さら紙とペンには戻れないし。
そんなわけで、評判の「ポメラ」を買いました。
これは、ポケットサイズの“電子メモ帳”。早い話が、文書作成専用機です。折り畳み式のキーボードを備えていて、しまうとスーツの内ポケットに入るぐらいなのに、ちゃんとQWERTY配列でタイピングできます。
この種の商品、「ほんとうに使えるんだろうか」的な不安がつきまとうものですが、今回は実際に店に展示しているのをみて商品の存在を知ったため、悩むこともありませんでした。店頭でひとしきりいじって、使用感の良好さを確認。タイピングも、サブノートPCのいちばん小さいタイプよりは使いやすいと思いますし、キータッチそのものは、デスクトップ機のキーボードよりもかなりいい感じです。購入を決めました。
ところが、使い始めてからしばらくの間、違和感がとれませんでした。先述の通り、物理的使用感は、決して悪くはないです。なのに、「なんか、しっくりこないんだよな」を感じ続けていたのです。
しばらくして、理由にきづきました。パソコンの代用品のように思ってしまっていたのです。
たとえばポメラでは、複数のファイルを開いておくことができません。フォルダを作ることもできませんし、ファイル数の制約もあるようです。また、電源をオフにしたとき、編集中の内容は自動的に保存されますが、カーソル位置は保存されません。パソコンのレジュームとは違うのです。これまで、複数のファイルを同時に開きながらあちこちなんて文書作成スタイルを取っていたのですが、そういうことはできません。
こうした「できない」の一つ一つに不満があったため「しっくりこない」だったわけです。でも、パソコンじゃないんだから、できないのが当たり前ですね。違和感を感じるというのは、逆に言えばその当たり前に気づいていなかったということです。
既に使い始めて1ヶ月がたち、だいたいなじんできました。ポメラは本来“電子メモ帳”なんで、ポメラにふさわしい使い方をすればよかったのです。現時点では、その辺を飲み込んだ使い方になってきています。
ただ、このままではやっぱり「ピンチヒッター」的だとも思うのです。結局は「QWERTYでタイピングしたい」につきるわけですから。もし、iPhoneのBluetoothがキーボードに対応したら、もう使わなくなっちゃうだろうな。
たとえばこうだったら? 「文章を書くだけ」っていうのをもう一歩進めて、「テキストファイルを扱うだけ」になってたらどうかな、と思います。いっぱいファイルため込めて、GREP検索できるとか。電子辞書内蔵してて、その用途で使える上にコピー&ペーストできるとか。そしてネットにつながって、WEBもメールもできる(テキストファイルだけだけど)とか。現状でもmicroSDを装着できるので、記憶容量は2GB。これって、テキストファイルしか使わないマシンにとっては、事実上無限大みたいなものです。
絵もサウンド扱わないという前提なら、ポメラサイズで実現可能でしょう。そして、それでも必要十分の強力なツールとなってくれるでしょう。絵描きでもない限り、PCを生産的に使っている時間の大半はテキスト処理なのですから。
プロダクトとしては、実際にはきびしいでしょうね。定価で買うと2万6千円。あと少しで、サブノートPCの価格帯に届いちゃうわけで、そうなったらほとんどの人はそっちを選ぶだろうし。
まあ、そんなつっ放したことを考えながらも、ひとつ気がつきました。
このポメラ、できることはちょうど昔の専用ワープロみたいなものです。画面の表示も26字×17行で、文章を書くという一点では全く問題ありません。
で、その昔の専用ワープロ。
「おお、キーボードで日本語が打てる!」
なんて感動しながら、でかくて重いのを、6・7万も出して買ってたんですね。
このポメラ、そういう道具の到達点でもあるわけで、たとえ将来使わなくなったとしても“自分博物館”に保存しておく、そんなガジェットになるような気がします。
(傭兵隊長)