先日仕上がった作品のタイトルを考えていた。
教会音楽の中には建物の反響音や音の持続時間を計算し、
山彦のように音が響いている間は
少し間を空けて演奏するものがある。
また音階も独特のものがあって教会旋法で作曲されている。
これらをルールの一部に取り込んで、
教会音楽風の曲が自動生成されるプログラムを組んで
1時間分レコーディングした。
心地よく響くできたての作品を聴きながら、
タイトルを考えていた。
グレゴリオ聖歌の文字が浮かぶ。
グレゴリオ・・グレッグ、グレッグの歌・・・greg’s song。
ん~、グレッグ。グレッグって誰?
調べてみたら、グレッグ・イーガンという
オーストラリアのSF作家を発見。
著作には何やら興味をそそるタイトルが並んでいる。
購入して読んでみた。
Greg Egan/“しあわせの理由”(短編集)から「適切な愛」。
読んでその発想に驚いた。
簡単にまとめると、妻は瀕死の重症状態の夫を
なんとか生命維持装置に繋いで死なせたくないのだが、
生命維持保険が高すぎて使えない。
保険会社に抗議すると1つだけ安く行う方法があるという。
自分の子宮内に夫の脳を置き、
血液供給を共有することで保持するのである。
また代理母には夫のクローンを宿してもらい、
生命維持以外のあらゆる能力を阻害する処置をして出産してもらう。
この間およそ2年。
誰にも邪魔されず夫を包み込んだその状況に彼女は安堵を覚える。
やがてクローンに脳が移植される。
長く使用されなかった脳の部位は萎縮しているが、
神経系統をコンピュータ制御のインターフェース経由で様々な不一致を解決、
リハビリを行った。
そして対面の時。夫の脳を持つ激しく若返った“夫”がたどたどしく口を開く。
「君がしてくれたことを聞いた。愛してるよ!」。
そして再び2人の人生を歩んでいくのだった・・・。
作品のタイトル探しから、えらいもんに繋がったものである。(ニ)