テレビでキムタクが、「寝るときに布団の中で毛布が足指に絡みつくのは我慢ならない」
と漏らしていた。この学校にはもっとうわてがいる。この寒い冬の時期でも、平気で裸足
にサンダル履きのH君。何やら足指の周りを何かで覆われることが大変不快なことが理由
だそうだ。空間と身体を分ける末端に位置するパーツの1つだからこそ敏感なのだろうか。
そんな彼はワタシに多くのおもしろい質問をぶつけてくれる。そしていつも話はそこから
どんどん膨らんでつい話が長くなってしまうが、とても気持ちの良いコミュニケーション
が取れている。そんなH君が、学校以外では下駄を履いているということでまた盛り上が
った。ワタシも幼いころ父の下駄を借りておもしろがって履いた覚えがあるが、なんと彼
の下駄は一本歯だという。ワタシの顔に“興味津々”と描かれていたのか、後日、デッサ
ン室にわざわざ持ってきてくれた。履かせてもらうと、普通の歯が二本のものより足首が
柔軟に動き、慣れると結構歩きやすそうである。
ところで、下駄は日本独自のもので、最も古いものはなんと2世紀に農耕具として発見さ
れている。もともと泥よけや、排泄時の汚物よけに重宝したらしいが、履物としてファッ
ション化されたのは元禄以降のようである。形が丸くなったり、塗が施されたりと多様化
してきた。そんな歴史をもつ下駄の中でも珍しい一本歯の下駄をあえて今の時代になんと
か入手したいと思った。カランコロンと上手に音を出して歩けるようになるには時間がか
かりそうだが、この夏は“一本歯の下駄”を楽しもうと思っている。(ニ)