毎年、卒業前日にいろいろ配られる。その中に、卒業文集「希望」がある。
今年も既に刷り上っているようだ。
我がクラスは、2つとも選ばれ掲載される予定だ。
その中の1つを、先立って紹介したい。
==================== 原文 ====================
その真っ暗な部屋には、何も描かれていない真っ白なキャンバスがあった。
私はいつからか、この真っ暗な部屋の中にいた。
そのキャンバスに、私は何も描けていない。
このキャンバスは私そのものだった。
私は筆を投げ出し、真っ白なキャンバスのある真っ暗な部屋から飛び出した。
けれどいくら走ろうとも、続くのは暗闇。
私は歩き疲れそのまま立ち止まる。何も無い、何も無い世界。
私はいったい、何がしたいんだろうか。
暗闇に溺れないよう、もがくように再び歩き始めた。
しかし歩き続けても、やはりあるのはただの闇。
私はどこに向かっているのかさえ判らない。
折れそうな心を支える物も無く、歩くのを止めようとしたとき、闇の向こうに何かが見えた。
何も考えず、ひたすらそれに向かって走った。
・・・そこにあったのは、真っ暗な部屋と真っ白なキャンバス。
床に放り投げられた筆が、静かにこちらを見ているような気がした。
私はその筆をとり、キャンバスに一本の線をひいた。
何故か私の心が躍りはじめた。
夢中でキャンバスに色をつけていく。
・・・私に色をつけていくように。
やがてキャンバスは、染められたその顔を誇らしげに上げていく。
私の心を染めぬいたように・・・。
色のない世界を染め終え、私はキャンバスから筆をそっと置いた。
描かれた部屋の窓から青い空が、楽しげに私をじっと見ていた。
==================== end原文 ====================
筆者の心の中が垣間見る事ができ、共感できる部分が多い。
また、白黒の世界だけで、これだけ鮮明に文章を描ける才能も見え隠れする。
我々ゲーム系の学科は、いずれRPGを学ぶため「シナリオ」を書くこともあるだろう。
その時、彼の才能が活きてくるように思われた。
(善)